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【万引き家族】レビュー(ネタバレなし)2018.06.14 Thursday
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映画が終わった時、
上映中誰一人一度も笑わなかったことに気づきました。
リリー・フランキーさん、安藤サクラさん、樹木希林さん、松岡茉優さんというそうそうとした俳優陣に、なんとも雰囲気のある子役がふたりの家族。
そのまま喜劇にもできそうだけど。
【万引き家族】はどちらかというと
日曜の深夜にドキュメンタリー番組をみているような社会派ドラマでした。
たとえば日々目にする事件のニュースを表面だけ聞いたら、
「そんなことする人が世の中にはいるのね〜」
と流して終わりです。
でも同じことを家の中からみていたら
劇中の人物の心情に入り込むのとは違うし、ましてや同情でもないなんとも言えない気持ちになります。
おそらく観客の多くはこの家族を『超傍観者』としてずっとずっと心配してしまうのではないでしょうか。
そこには罪悪感があります。
血の繋がった家族だとしても、必ずしもわかりあえるわけではないことに。過ちを犯してしまった人が、たとえ罪を償っても本当の意味で許される土壌がないことに。
これは日本だけの問題ではないでしょうね。
この作品が国を超えて認められたのは、この誰のせいともいえない罪悪感の共有と、国民皆保険、皆年金で経済的に裕福なはずの日本にも格差が広がっている事実に驚きを感じたからかもしれません。
後半、安藤サクラさんが演じる信代が、日本の家族制度の正しい在り方に投じる台詞があります。
個人的に大好きなトラン・アン・ユン監督作品に似ているような気もしましたが、美しい映像はほんの少ししかありません。
どちらかといえばほぼ生活感あふれた雑多な画面です。
それでもそう感じたのは、信代のなまめかしい艶っぽさと子供たちの表情と細野晴臣氏の透明感あふれる音楽のなせる業でしょうか。
風景を描くというよりは、家族の笑顔が印象的な(でも観客は心から笑えない)作品でした。
映画館で観るのがもったいないという意味では決してないですが、ドキュメンタリー番組同様、深夜家で観たい映画でした。
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